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詩文庫『まど・みちお詩集 ぞうさん』のこと [季節のおすすめ]

 ぞうさん
 ぞうさん
 おはなが ながいのね
  そうよ
  かあさんも ながいのよ
               ―『まど・みちお詩集 ぞうさん』
                          所収詩「ぞうさん」より

 あれ?これって子どもの歌でしょ? 子どもが歌う歌じゃないですか。

 編者はかつて、まどさんにそう尋ねたものでした。するとまどさんのお返事はこうでした。

 「これはね、象の子どもが、森の仲間たち、ライオンや熊やリスたちから
  『やーい、きみの鼻は長くておかしいや』とからかわれたのです。
 すると象の子どもは、そうだよ、ぼくの大好きな母さんの鼻だって長いんだもん、
 といって自分の長い鼻を空にかかげて自慢した。という歌なんです」

 つまりこの歌は、象の子どもが、自分が自分に生まれてきて嬉しい、という
「存在の詩」なのですね。

 ぼくたちや子どもたちが、人生の早くに、自分はいったい誰だろう?どこから来たのだろう。なんの用事があるのだろうと悩むとき、自分が自分に生まれてきてよかった、と知ることができたらどんなに幸せでしょう!

 この詩はやはり、ただの童謡ではありません。
 あえて歌わず声に出して読んでみれば、深い深い現代詩であることがわかります。


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